
2024年1月1日、16時06分。
能登半島で、本震の前に震度4の地震が発生していた。
この時、能登空港(愛称:のと里山空港)ランウェイ25にはANA749便「ボーイング737-800」が能登情報圏を最終進入中だった。
管制はただちにランウェイチェックが必要と判断し、航空管制運航情報官は上空でのホールディングを指示した。
その時だった。能登半島を今度は最大震度7の大地震が襲った。
16時10分、能登半島地震の本震だった。
揺れが収まるとターミナルビルの電源が失われ、館内はほとんど真っ暗な状態になった。ANA749便の受け入れは到底不能となり、ホールディングしていた737-800は管制機関と調整の上、羽田に引き返してことなきを得た。
地震発生のタイミングで着陸していればと思うとゾッとする。
即席の避難所として
一方、折り返しのANA750便で出発を待っていた人、見送り、出迎えの人たちはみな屋外へ避難した。
真冬の能登地方の16時半、付近は停電によってやがて漆黒の闇が訪れようとしていた。ANA750便に乗る予定だった人と見送りに来た人、ANA749便の乗客を迎えに来た人など合計約300人は駐車場にしゃがんで、収まらない余震に堪えた。
能登空港ターミナルビルは避難所に指定されていたわけではないが、県の防災拠点であり、またANAの優秀な危機管理体制もあって、即席の避難所として機能することになる。
余震が続く中、空港周辺の人々も高台にあって、津波災害の心配がなく比較的安全な空港に集まり続け、その日の空港駐車場での避難者は合計600人ほどに達した。
空港ターミナルへの取り付け道路を小型のバスが通れるようになってからようやくマイクロバスが手配され、ANA750便に乗る予定だった客から順次金沢市内へと送り届けていく。
週3便での運航再開から定期便再開まで
運行の再開には安全運航の確保はもちろん、運航再開にはさまざまな要因を考慮しなければならなかったが、1月27日に臨時便運航が開始される。機材はボーイング737-800で、ダイヤはANA1451 羽田発10:30 能登着11:30と、ANA1452 能登発13:50 羽田着14:55。いずれも火、木、土曜の週3往復の運航だった。
空港に泊まり続けるなど関係者の大変な努力があって、能登臨時便のANA1451~1452便は週3往復のスケジュールを飛び続け、能登の復旧、復興に寄与していく。

2024年4月26日からの定期便再開では、能登着の747便と能登発の748便の時間帯設定が大きなポイントとなった。
被災した現地の道路状況が非常に悪い中で、道路を中心とした空港アクセスの安全を考えると日没後の就航はあり得ない。
復旧が比較的早く進んでいるのは幹線道路だけだったが、朝早いと道路状況の悪さから復旧関連の車両などで道路が渋滞することが多く、空港スタッフたちの出勤への影響も懸念された。
地方空港と道の駅の新しい在り方
災害前の能登空港は1日2往復で、羽田線をANA(全日空)1社が運航していた。空港規模のサイズは小さいものの、全国で初めてターミナルビルと行政庁舎が合築されたり、空港として初めての「道の駅」への登録を行うなど、個性的な空港として存在感があった。
そんな能登空港は被災後、それら2点の個性は活かされつつも、災害からの復興の”拠点”としての顔を持つようになった。旅行者からの印象が変わってしまった石川・能登半島。玄関口である「能登空港」はまだまだ行きづらい空港となってしまったまま。しかし、羽田から直接能登半島に乗り込むルートは完全に復旧している。
東京方面の皆さんは、万博に行く際には関空着なんて通り一遍の退屈なルートを選ばず、羽田から能登半島のど真ん中に乗り込んで、ガンガン散財していただいてから会場に向かっていただければと思う。
レストラン棟「NOTOMORI」
震災後、空港敷地内に設置されたレストラン棟「NOTOMORI」の施設内では6つの飲食店が軒を連ねている。

これらの店舗の多くは災害発生前、被災地域で高いニーズを得ていた店舗。能登半島を代表するグルメをまず空港内で一通り楽しむことができる。
空港内のコワーキングスペースとしての機能も果たしているので、忙しい人も大丈夫。
この「NOTOMORI」が誕生した背景には、能登空港に地震の復旧・復興活動の支援者のための仮設宿泊所が整備されたことが大きい。
それまでは空港周辺には、空港近くの「ゴーゴーカレー」を除くと飲食店やコンビニなどはほとんどなく、食事をするのもひと苦労だった。
入居した店舗にすれば、被災し、被災地での営業が困難になった中で、空港での出店は「働ける場所」の確保という意味でも大きな助けとなった。
道の駅「桜峠」

この「のと里山空港」にアクセスする「のと里山海道」の、のと里山空港ICから珠洲道路を珠洲方面に車で15分ほど走った場所に道の駅「桜峠」がある。



駐車場は広く、停める場所は選び放題。仮眠もしやすい。


綺麗なトイレが震災で壊れてしまい、現在は仮設トイレである。大きなタンクで水を賄っているということは、水道の復旧がまだということだろう。



復旧の道が遠いことは、道の駅正面の山が大きく崩れたままになっていることからも感じられる。



それでも休憩するには最高の環境だ。



日本庭園、桜の季節は最高


決して大きな庭園ではないが、この道の駅の素晴らしい休憩環境を構成する一つだ。
桜の時期は裏切らない
「桜峠」の名は、期待を裏切らない。
桜峠の周辺は、桜の木だらけなのである。

桜の季節になれば、花見には絶好の場所となる。


