写真は、道の駅「山田錦発祥のまち・多可」の駐車場から見える田園風景。
多可町は標高600~800メートルほどの山々が連なる山地に囲まれた中央部東播磨地区の最北端に位置し、京阪神から1時間半の距離にある田園風景が広がる素朴で美しい町です。
多可町の主要産業は農業で、酒米「山田錦」の交配に母本として使われた「山田穂」が発見された地域としても有名です。このエピソードにちなんで、多可町の中心部にあるこの道の駅は「山田錦発祥のまち・多可」と名付けられています。
多可町は、日本一の酒造好適米「山田錦」発祥の地であるとともに、日本一の手漉き和紙「杉原紙」発祥の地(北に走れば、道の駅「杉原紙の里・多可」という道の駅もある)、そしてなんと「敬老の日」の発祥の地でもあるという「3つの発祥の地」として地域の活性化に取り組んでいます。
観光資源としては、夏にはホタル・梅花藻、棚田百選に選ばれた「岩座神の棚田」、妙見山・千ケ峰・笠形山など豊かな自然を有しています。
道の駅としての充実度をチェック
道の駅の施設を、まずはぐるっとまわってみる。
まず、駐車場。敷地全体の広さは98平方メートル、駐車場は26台分。決して大きな駅、広い駐車場とはいえない。
しかし仮眠をする場合、それが昼間か夜かにもよるだろうが、車の数とトイレからの距離を考えて、ベストポジションは充分確保できると思われる。
トイレの便器数からも推察できる通り、こぢんまりした道の駅である。
休憩場所もこんな感じで、実に素朴で落ち着ける。
観光物産館
これが、酒蔵をイメージして建てられたという木造平屋建ての観光物産館だ。
道の駅山田錦発祥のまち・多可「まちの駅・たか」では、地域の観光物産館として、コンシェルジュを配置し、地域の観光案内を行いながら、ここでしか買えない特産品を数多く取り扱っている。
朝採り野菜が充実
観光物産館は、野菜の直売所を併設しており、朝採り新鮮野菜はすごく充実しているらしい。
私が伺ったのは午後だったので、すでに売り切れている野菜も多く、毎日たくさん売れているのだろうと思った。
そんな朝採り新鮮野菜もさることながら、観光物産館は「山田錦」をはじめとする土地の名産品や「播州織」、ヒノキ製品などの伝統文化の発信拠点であり続けている。
商品棚に並ぶのは、兵庫県の地酒や味噌、醤油など。米の関連品が多く、もちろん「山田錦」からつくられた日本酒の特設コーナーもある。
日本酒に欠かせない酒米の王様として名高い「山田錦」だが、実は兵庫県多可町がその稲穂の生誕地とされている。なんでも、明治時代に多可町の山田勢三郎という人の田んぼでひときわ背が高い酒米の稲穂が発見され、それが現在の山田錦の母方となる「山田穂」であったらしい。山田勢三郎さんが偶然にも見つけた「山田穂」と「短稈渡船(たんかんわたりぶね)」を交配させて生まれたのが「山田錦」となり、長い年月をかけて改良され、現在の最高の酒造好適米へと進化を遂げたのだという。そんな多可町で育った山田錦を使って醸造された日本酒の数々、お酒好きにはたまらないだろう。
もちろんこの日本酒コーナーに置かれている瓶の大半が「山田錦」を使用している。いくつかを紹介しよう。
お酒の他にも、黒にんにくや鹿肉といった多可町の特産品が数多く販売されている。中でも「とりめし」は絶品だと聞いた。
播磨では、ふ化してからおよそ100日間育てられた「播州百日どり」が有名で、数々の郷土料理に使われてきた。その中でも、引き締まった「播州百日どり」が厳選され、その甘い肉を米、野菜と一緒に炊き込んだ「とりめし」は地元で大人気だそう。
たっぷりの鶏肉をごぼうやにんじん、こんにゃくなどと炊き込みご飯にした関西の郷土料理が「とりめし」だ。それを、缶から取り出してレンジで熱し、あたたかいご飯と混ぜるだけで、どの家庭でも手軽に播磨の味を再現できる便利な缶詰にしたのが「みつばグループ」の缶詰。「とりめし」を初めて味わいたい人にぴったりということなので、この「とりめし」の素、私もお土産に一つ買った。
ちなみに、鶏肉のみを具材にした「こっこめし」、おかずやおつまみ用の「とりつま味」などのバリエーションもある。
おむすびキッチン夢蔵
地元産の炊きたてのお米を握っておむすびにしてくれる、多可町民の台所&お食事処「おむすびキッチン夢蔵」とお隣に「たにし」というお店が、道の駅の真向かいで営業していた。
この2店舗では、「山田錦」を使ったうどんや鹿肉の丼、ソフトドリンクなど、豊富なメニューで地元民やドライバーに好評だという。注文した料理は屋外のテーブル(夢蔵の前にある)で食べることもできる。
「山田錦」の米粉で打った麺で作られたきつねうどんだ。シコシコとした麺の食感が特徴で、コシが強いため時間をかけて食べても麺が伸びず、最後の一口まで心地いい弾力を堪能できるそうだ。
山中に位置する多可町には野生の鹿が多数生息していて、野生だけにその肉は身が引き締まっている。ジビエとは、狩猟によって捕獲した野生の鳥獣の肉、およびそれらを食肉としていただく食文化のことだが、日本においては、鹿やイノシシ、クマ、野ウサギ、カモ、キジなどが代表的なジビエである。ジビエは、高タンパク、低カロリーで栄養価が高く、アスリートの身体づくりやダイエット食としても注目されている。ジビエの食文化は、古くからヨーロッパで貴族の伝統料理として発展してきたし、ここ多可町でも高タンパクの栄養食として住民に愛されてきた。ジビエは秋冬の旬素材として多用されるが、これは、野生の動物たちが冬に備えて体に栄養を蓄え、肉質が非常によい状態だから。道の駅で食べられる「鹿丼」は、鹿肉を甘辛に調理してご飯の上に盛り付けた一品で、肉のクセが消え、ごぼうやこんにゃく、ねぎなどの具材とマッチしている。鹿肉を食べたことがない人も多いだろうが、きっと大丈夫だそう。
超人気商品「天船巻き寿司」
多可町八千代区に、大人気の巻きずしがある。
このマイスター工房八千代の「天船巻き寿司」は、道の駅でも買うことができる。
ただし、マイスター工房八千代の営業日が木曜日、金曜日、土曜日、日曜日の週4日となっているため、道の駅での販売も同じ曜日での販売となっているらしい。また、このマイスター工房八千代「天船巻き寿司」は大人気のため、平日(木曜日・金曜日)でも午前中には全て完売することが多く、土曜日・日曜日は早いと10時30分~11時頃には完売することが多いそうだ。
「播州織」のアパレル
アパレルコーナーもあって、そこには北播磨の伝統工芸「播州織」の作品が多数置いてあった。
「播州織」はあらかじめ染め上げた綿糸で繊細に作られる「先染め織物」であり、肌触りが心地よいので薄手の衣服に向いているという。
すぐ北の余暇村公園へ行こう
道の駅を出て北に向かうと、こんな景色が続き、たちまち余暇村公園に到着する。
多可町余暇村公園の紅葉は最高。とりわけ橋を覆うように赤く染まった美しい木々は圧巻だ。見ごろを迎える11月中旬にはライトアップもしている。
余暇村公園は、ショウブやバラが美しいことでも知られている。
バラ園には40種760株が植えられていて、管理が難しいと言われるバラの花が美しく咲くように心を込め行き届いた管理がされている。日本庭園が広がる「鑑賞ゾーン」には他の木々や花も美しく咲き、真冬以外はいつでも景色が堪能できる。
銘柄鶏の「百日どり」や、地元で採れた旬の野菜をバーベキューで味わうこともできる。蒸し焼きで肉や野菜がジューシーに焼ける蓋付きのバーベキューグリルや、火持ちが良く灰や煙が少ない国産の炭など、食材はもちろん道具・食器などもすべてそろっているので、手ぶらでOK!
私はとうに子育てを終わっているが、現在子育て中のファミリーは、バーベキュー以外も大いに楽しめる。
広い敷地内には、大型遊具のある「冒険の広場」や、宿泊やキャンプができる「いこいの森」もあるので、家族みんなで楽しめる。
冒険の広場で一番人気は、全長253mのローラーすべり台“妙見スカイローラー”。お子さんお孫さんは大喜び間違いなし。
「cafe chattana(チャッタナ)」
公園の入口にカフェがあります。薪ストーブに観葉植物、手作りのテーブルなど、木のぬくもりが感じられる店内で、地産地消を目指し多可町で採れた無農薬野菜やお米を中心とした食材を使ったランチや季節ごとに変わるスイーツを楽しめる。一人二人ならバーベキューではなくこちらが良さそう。
岩座神(いさりがみ)の棚田が素晴らしい
兵庫県のほぼ中央部、名峰千ヶ峰の南麓に位置するのが、日本棚田百選に名を連ねる岩座神の棚田だ。「岩座神(いさりがみ)」という神々しい名前は、千ヶ峰の別名である「盤座神山(いわすわりかみやま)」が転訛したとされる。
最も高い法面には「寺積み」「にんじゅう」(踏み石)、「とび重」といった非常に特殊な石積みが見ものではあるが、そうした棚田の見どころ以外にも郷土記念物の巨木ホソバタブ、マンネングサなど見るべきものが多く、季節によって全く違った風景を楽しめる名所である。
ルーツは鎌倉時代
多可町岩座神の棚田の起源は、鎌倉時代に遡る。
棚田は山肌にあるので、陽射しを受けられる時間は長くない。町内の平野にある田んぼに比べると、7割前後の収穫量だという。
田んぼのところどころの稲穂が倒れているのは、風でも獣のしわざでもないく、穂が大きくなって倒れるのだそう。
「実るほど穂を垂れる稲穂かな」と、私もそうありたいと思って生きているのだが全然ダメ、でも稲穂が膨らんで重たくなって倒れるというのは本当のことなのだ。稲刈りがすこし大変になるくらいで、倒れたってどうってことはないらしい。
こうしてよく実った穂は収穫され、「いさりがみ棚田米」として、町内や近隣の道の駅で販売され、多可町のふるさと納税返礼品の一品目ともなっている。