日本の民営交通史上最悪の事故は1985年8月に起こった「日航ジャンボ機墜落事故」。乗客乗員524人を乗せた日本航空123便が、群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落したのです。
翌年12月、今度は余部鉄橋を渡っていた列車が日本海からの強風に煽られて高さ40mの橋から列車が真っ逆さまに転落。 真下にあった民家と水産加工場を直撃する大惨事が起こってしまいました。
私の社会人駆け出しの頃に相次いで起こったこの2つの大事故は、いずれも墜落、転落という、高所恐怖症の私にとっては今でも想像するだけであまりの恐怖に卒倒しそうになるし、二つの事故とも、兵庫県人の私の知人が犠牲者となったことからも、決して忘れることはできません。
道の駅「あまるべ」は、兵庫県北部の旧香住町(現香美町香住区)にあります。 1986年の恐怖の余部鉄橋を保存した道の駅であるとともに、日本海を望むことが可能な古くからの絶景スポットを保存する余部鉄橋の展望施設を中心とした施設です。
事故の後、強風対策が施された新しい橋が完成して運用も開始。
旧余部鉄橋は2010年7月、鉄路としての役割を終えたのです。
道の駅と、空の駅
この道の駅の最大の特長は、道の駅と隣接した山陰線あまるべ駅がある空の駅(地上約40m)まで、スケルトンのエレベーターで行くことができることだろう。
余部クリスタルタワーと呼ばれるこのエレベーターからは、残された旧余部鉄橋の橋の部分を見ることができ、わずが45秒で空の駅(展望施設)に到達できる。しかも入場料無料だ。
余部鉄橋「空の駅」は、現在の余部橋梁が開通するまで、100年近くにわたって活躍した旧橋梁(通称「余部鉄橋」)の一部を再利用した展望施設である。
そして実際に、ここから山陰線に乗って、豊岡方面や鳥取方面へと、車窓の旅に出ることが可能なのだ。
ここから眺める日本海は、山陰海岸ジオパークの複雑な入江風景と相まって、実に美しい。
山陰海岸ジオパークとは、 日本列島が大陸の一部だった時代から、日本海形成に関わる火成岩類や地層、海水準や地殻の変動によって形成された、リアス式海岸や砂丘をはじめとする、多彩な海岸地形など貴重な地形・地質遺産を数多く観察できるエリアのことで、凄まじく高いこの山陰線の「空の駅」からは、その絶景を見ることができるのだ。
車でここに来ているからには、ここから兵庫の名湯・城崎温泉に向かう人は車で行くと思うが、空の駅からは山陰線の普通列車でおよそ40分あれば着く。列車はなんといっても道路のはるか上を走るので、リアス式海岸ならではの、海とトンネルを繰り返す絶景を、車窓を楽しめる。
余部鉄橋の歴史を学ぶ
また、ここでは余部鉄橋の歴史を辿り、明治末期に、“東洋一の橋梁” として建設された土木遺産であったこと、そして山陰線を結ぶ非常に重要な役割を果たしてきたことなどを学ぶことができる。
道の駅前には、その鉄橋の鉄骨の一部や、鉄橋の歴史を語る解説看板も設けられていて、この巨大な鉄の塊を目の当たりにすると、こんな巨大なものが40メートルもの高さに、しかも明治初期に完遂された工事なのかと、日本建設技術の凄さに驚嘆を禁じ得ない。
旧余部鉄橋は、明治45年1月に完成した東洋随一の鋼トレッスル橋である。
我が国有数の橋梁として、当地域だけでなく、多方面から多くの人々が訪れる観光名所として親しまれてきた。しかし、1986年12月の列車転落事故を契機に架け替えに向けた取り組みがなされ、平成22年8月に現在の余部橋梁は完成した。
もちろん、列車転落事故があった、その歴史を学ぶこともできる。
ここは紛れもなく、 “旧余部鉄橋” の跡地なのだから。
駐車場、トイレ、休憩環境は?
駐車場は、道の駅併設のものは無料。
トイレの場所もわかりやすいし、綺麗だ。
でも、休憩程度ならまだしも、1986年の事故の犠牲者が無念の死を遂げた場所、その駐車場でのんびり仮眠する気に私はなれない。
休憩を兼ねて絶景を楽しみたいなら空の駅での休憩をおすすめするが、奥行き70メートルほどの細長い空間が谷からせり出し、背が高く頑丈そうな金網に囲まれたその中から金網越しに日本海のパノラマを眺めても、緊張感が先に立つ。
しかも、日本海からの強風が容赦なく吹き付けてくる。かつて余部鉄橋を通った列車もこの風の強烈なのをまともに受けて転落したのかと思うと、いたたまれなくもなるし(新橋梁にはアクリル製の防風壁が設けられている)。
物産館では余部鉄橋グッズを販売
道の駅の施設としては物産館と軽食堂がある。
物産館で目につくのは余部鉄橋の鋼材で作ったプレートと、梨(鳥取名産)。
鋼材の方は限りがあるようだ。
売り切れていても、ま〜イ〜カ!
余部鉄橋の名を冠した土産品は数多いから。
「余部鉄橋の思い出」は鉄橋を描いたプリントクッキー。 「余部夢紀行」はつぶあんがたっぷり入った饅頭である。 「黒豆せんべい」「黒豆きんつば」等、丹後黒豆を用いた商品、 日本海の幸を用いた「カニパイ」「カニまんじゅう」「モサエビせんべい」、 近隣の特産品の「出石そば」等も販売されている。
軽食堂では「余部鉄橋御前」など
軽食堂は物産館の横にある。規模は大きくないが、オリジナルのメニューが並んでいる。
人気No.1はカニちらし寿司を中心とした「余部鉄橋御前」のようだ。
香住産のカレイ煮つけが付いた「野菜天定食」、カキフライ入りの「海カレー」、 「浜うどん」等のメニューもあった。 なお、本駅には観光展示スペースもある。
ここでは余部鉄橋に関するパネルが掲示され、ビデオが上映されている。