
名勝「天龍峡」。
天竜川の浸食によって造りだされた、南北約2kmにわたる峡谷の美しい景観だ。
とにかく奇岩断崖がすごいが、アカマツやカエデ、サクラなど峡谷を彩る木々、天竜川の流れと川下り舟などが、まさに水墨画のような峡谷美を織りなす。

ここに来て桜を楽しみ始めた早々に、思ったことがある。
それは、天龍峡という場所は冠雪が始まる初冬に訪れると、きっと今の桜の季節、あるいは紅葉の季節にも勝る究極の絶景を楽しめるではないかということだ。
色は乏しくても、乏しい季節だからこそ生まれるまさに水墨画のような陰影こそが、この天龍峡の造形の真骨頂であろうかと。
来ていきなり「冬に再訪してみたい」と思った、それほど「造形的な美しさ」が際立っている場所なのである。



北端部から遊歩道で天龍峡をめぐる
さて、峡谷の北端部は「姑射橋」より上流にある。
ここが入り口となって、遊歩道による天龍峡めぐりを楽しめるのだが、ここだけは峡谷とはまったく異なる景観だ。
峡谷とは対照的な広い氾濫原と、その先には伊那谷の特徴でもある段丘や中央アルプスの峰々をも見ることができる。いち早く彼岸桜が咲き、続いてユキヤナギが対岸の汀線沿いに咲くエリアである。

遊歩道を歩けば峡谷美を手軽に楽しむことができるが、天龍峡を余すことなく鑑賞するには川下り舟が最適と言われている。
江戸時代に物資運搬として発達した川下り舟は、幕末より客船として利用されるようになるが、中部高地から太平洋沿岸へ出るには、天竜川の舟下りが当時の最短コースだった。
明治時代に来日した欧米人にも利用され、彼らの旅行記によって、天竜川の急流と舟下りは国の内外に知られるようになる。
十勝
明治15年(1882年)書聖と仰がれた書道家の日下部鳴鶴(くさかべめいかく)が天竜峡を訪れ、十の岩峰を選んで、それぞれ漢詩にちなんだ名前を付け、岩面に自筆の文字を刻んだ。
勝手に何をするねん、という話でもあるが、とにかくそれ以来、十勝(じっしょう)と呼ばれている。
十勝のほとんどは、川下りの船上から眺望できるそうだ。
龍角峯(りゅうかくほう=旧称:花立岩)は、谷底から垂直にそそり立つ塔状の巨岩で、川をゆく船がいかにも小さく見え、その巨大さを感じることができる。
天龍峡を代表する奇岩として名高い龍角峯は、つつじ橋の少し上流の龍江側にあるが、この巨岩の頂部に遊歩道が通っていて、ここからは峡谷の北半分を眺望できる。
鳥帽石(うぼうせき=旧称:烏帽子岩)は、川路側の北にあり、舟下りのコースから外れているが、遊歩道で付近まで近づくことができる。烏帽子とは、ご存じ平安時代から近代にかけて男子がかぶっていた帽子のこと。そんな風に見えるだろうか??

道の駅「信濃路下條」
道の駅「信濃路下條」は、天龍峡からは数キロ南西。長野県南部の下條村にある。

中央自動車道の飯田山本ICから分岐する三遠南信自動車道の天龍峡ICから国道151号線沿いに南に約2キロということで、とてもアクセスしやすい道の駅である。
私は道中の景色を楽しむために、節約も兼ねて一般道を走ったが、これは「当たり」である。




駐車場は、広い、というかたくさんあるというのが正しいだろうか、何箇所かあって、それぞれ変化に富んでいる。




トイレは施設内にもあるが、駐車場に近いトイレはここ。清掃が行き届いており、気持ちよく使わせていただいた。





休憩場所としては、いろいろあるが、特に大きな座敷があるのには驚いた。







この道の駅、どうやら団体客が多いようだ。

物産館・農産物直売所

いきなり「龍太そば」ってなんそれ?
この下條村は、俳優の峰竜太の故郷ということで、地元では彼の名前は「ブランド」らしい。
若い人は、峰竜太?誰それ?かも知れないが、昭和世代はまあ誰でも知っている俳優さんではある。




物産館では、いきなり驚いた「竜太そば」の他には、自然薯そば、信州そば、そば茶などの蕎麦関連、漬物類が目をひいた。
農産物直売所では、この地域の特産「辛み大根」「甘夏」などが目立っていた。


畜産物加工品を販売する「牧遊館」


肉、肉、肉。牧遊館では主力の肉類だけでなく、飲むヨーグルト、手作り生乳ケーキ、チーズブッセ等の畜産物加工品が販売されている
「おろしそば」が人気のレストラン


某テレビ番組で「道の駅激ウマベスト10」の第5位にランクされた「おろしそば」が有名な店。
この「おろしそば」は、薬味が大根おろしだけ。刻みネギもワサビも付いてこない。
ただ、この大根おろしが只者ではない。下條村でしか生産されていない通常より4倍?辛い辛味大根で、これがそばに絶妙にマッチして人気を博しているのだ。 麺は「竜太そば」を使っている。



施設1階では、「おろしそば」の他にも「割子そば」「大名そば」「田舎そば」「ざるそば」等の蕎麦メニューが一通り揃っていて、 ソースかつ丼、五平餅などのご当地料理も販売されている。

軽食堂では、コーヒー、ソフトクリーム、おやき等が食べられる。